2010 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスにおけるアクティビストファンドの役割と上場企業法制の再検討
Project/Area Number |
21730069
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
玉井 利幸 南山大学, 法学部, 准教授 (90377052)
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 投資ファンド / アクティビスト / M&A |
Research Abstract |
平成22年度は、ファンドが支配株主となっている場合の法的問題とその問題の緩和方法について研究を行った。ファンドがある会社に集中的に投資を行い、支配株主となっている場合かある。このようなファンドの投資回収戦略(exit strategy)の一つとして、全部取得条項付種類株式を用いた少数株主の締出(MBOも含まれる)がある。少数株主の締出は支配株主のファンドと一般少数株主の利害が対立する場面であり、少数株主の保護が問題となる。現在のところ、主な少数株主の保護の手段は全部取得条項付種類株式の取得価格の決定など事後的な金銭的救済であるが、それには不十分な点が多い。支配株主自ら自発的に公正な締出取引を行うようになることが究極的な株主保護であり、そのように行動するように支配株主にインセンティブを与えることも考えるべきである。一定の場合に締出の効力自体を否定すれば強力なインセンティブを与えることができる。少数株主の締出の効力が否定されるべきかどうかを判断する際は、効率性の問題と分配の問題に分けて考えるべきである。締出の効力が認められるためには、締出により企業価値が高まり、カルドア・ヒックス基準の意味で効率性が改善していることが必要であると考えるべきである。企業価値が増加している場合は価値の増加分の分配の問題が生じる。裁判所が分配の問題に取り組む際は、株主平等の原則を実質的に解し、価値の増加分が実質的に平等に少数株主にも分配されていること(すなわち公正な価格であること)が必要であり、そうでない場合は株主平等の原則に反すると考えるべきであるが、裁判所は分配の問題に介入するのは限定的であるべきである。
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