2009 Fiscal Year Annual Research Report
親権法の基礎的研究-帰属及び行使、懲戒権、居所指定権を中心として
Project/Area Number |
21730072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保野 恵美子 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70261948)
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Keywords | 親権 / 未成年後見 / 家族法 |
Research Abstract |
平成21年度は、親権法の立法課題とされてる二大論点である児童虐待の対応の観点からの親権喪失制度等の見直し及び離婚後の共同親権を主たる対象として、仏、英を中心とする外国法の状況を概観し、次のような日本の親権法の構造的特徴及びその限界を確認した。 まず、親権の「帰属」か「喪失」かという二者択一構造となっており、法は親権の所在を定める位相で親権を規律するにとどまっていること。そのために、帰属させつつその行使に法的な制御を行う方法が存在しないことである。次に、基本的には、親権を監護権及び財産管理権という抽象的なまとまりとして捉えて規律がなされており、特に複数者の親権行使の調整が必要なときに、きめの細かい調整を行い難いことである。最後に、第三者の関与の適正な位置づけがなされているとはいえないことが挙げられる。現行法では、父または母との関係でしか親権を定めておらず、第三者の子に対する関与は、未成年後見人、養親以外の形式としては予定されていないため、第三者による子への安定的な関わりが確保されにくいという問題がある。仏法、英法には、極めて詳細な、具体的かつ現実的な親権行使にかかわるルールが用意されており、日本法との格差に圧倒されるほどである。これらの法域で詳細なルールが発展してきたのは、一方で抽象的な権利義務の規律に留まらずに現実的に子の利益を実現する要請、他方で親又は親子に対して守られるべき固有の権利を尊重する要請との容易ではない微妙な衡量をねばり強く行っている結果であると思われる。今後は、このような基本的な問題意識に基づき、より具体的な解釈論に焦点を絞って比較法研究を続けていく予定である。
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Research Products
(2 results)