2010 Fiscal Year Annual Research Report
親権法の基礎的研究-帰属及び行使、懲戒権、居所指定権を中心として
Project/Area Number |
21730072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保野 恵美子 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70261948)
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Keywords | 民事法学 / 家族法 / 親権 |
Research Abstract |
本年度は、私人たる第三者と親権者との共同での親権の行使、離婚した父母間での共同親権行使の調整の制度につき、日本民法766条の解釈に関する既存の判例及び学説を批判的に再整理したうえで、イギリス法及びフランス法を対象に比較法的研究を進め、その成果の一部を「親子の養育関係」として中田裕康編『家族法改正-婚姻・親子関係を中心に』に発表した。この研究は、近代家族像をめぐる民法立法時及びその後の論争を概観したうえで、中川善之助と我妻栄という代表的な家族法学者の主張を対比することにより、親子の養育関係をめぐる権利義務についての具体的な解釈論(親権と未成年後見と野関係、養子縁組及び離縁の要件及び効果、扶養等)とその背景となる家族理念像とに相関がみられることを明らかとした上で、それぞれの家族像の特徴を婚姻と親子との相互関係及び相互関係を根拠づける理念に着目して描出したものであり、現行家族法の解釈のみならず、今日関心が高まっている.家族法の改正論に対して基礎的な視点を提供する、重要な成果である。 また、成果の公表までには至らなかったものの、親権と関係の深い成年及び未成年後見制度及び後見制度と同様の機能を果たしている特別法上の制度である精神障害者に対する保護者制度について、基礎的な研究に着手した。この研究は、私人の保護に対する公的な関与の意義と限界について制度横断的な構造理解を促しうるものである。
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