2011 Fiscal Year Annual Research Report
親権法の基礎的研究-帰属及び行使、懲戒権、居所指定権を中心として
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21730072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保野 恵美子 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70261948)
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Keywords | 民事法学 / 家族法 / 親権 |
Research Abstract |
前年度までの研究において、親権制度、特にその制限の側面においては、未成年者の保護をめぐって親による私的な保護と裁判所等による公的な保護との関係を構造的にどのように考えるかが重要であるとの視点が得られた。本年度は、この成果を、大村敦志ほか編著『比較家族法研究-離婚・親子・親権を中心に』において、公表することができた。この研究では、イギリス法、フランス法との包括的な比較研究を通じて、未成年者の監護・養育法制を設計、考察するにおいて、親権制度のみならず、未成年後見、成年後見、養子縁組、行政上の社会的養護制度等を広く視野に入れる必要性を指摘し、私的な色彩の強いイギリス法と公的な関与が手厚いフランス法の特徴を示した上で、行日本法の課題を示した。このような課題の提示と外国法における枠組みの参照は、平成23年に実現した親権法の改正によって新たに導入された親権の一時停止制度の活用が期待され、親権が行時停止した場合の受け皿として、民法上の未成年後見制度と行政上の社会的養護制度とが共存する日本の現状において、とりわけ重要性を有するものである。 さらに、この視点からの研究の一環として、成年後見制度及び精神障害者の保護者制度について、各論的な研究を進め、それぞれ、「成年後見における「居所指定」」及び「シンポジアム「成年後見の現状と課題-能力の定義と判定について」民法学の立場から」、「精神保健福祉法と民法714条(責任無能力者の監督義務、責任)」としてまとめた。これらは、個別の論点を扱った、直接的には射程の狭い研究であるが、公的な関与の程度が高くない日本の課題を間接的に示すものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、親権制度の比較法的研究及び隣接制度たる後見、保護者制度等の個別研究が進んでおり、比較対象国の補充及び個別論点の研究の相互の関連づけによって、研究の進展が見込まれる段階に至っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
相対的に研究が進んでいない未成年後見制度に関する比較法研究を補充したうえで、本年度までの個別研究の成果を踏まえて、親権制度を中心とする未成年者の保護制度の構造を分析する視点を抽出するまとめの段階の研究を進める。なお、研究を進める中で、親権及び未成年者後見に加え、成年後見及び同様の機能を有する精神障害者の保護者制度との比較検討の重要性が明らかとなったため、これらも視野に入れて研究を進めたい。
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Research Products
(5 results)