2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代契約法におけるプレ・モダンの法の再生とその法史学的再定位
Project/Area Number |
21730074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 博康 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (90323625)
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Keywords | 民法 / 現代契約法 |
Research Abstract |
本研究は、債権法・契約法の改正などを中心とした近時の契約法の議論動向において近代法からの脱却を目指す方向性が顕著であることを踏まえ、そのような動向を近代法成立以前の「プレ・モダンの法」の再生として特徴付けるとともに、そうして新たな装いのもとで提示される諸理論について法史学の観点からの再定位を試みるものである。本年度における最も重要な研究成果は、申請者が2003年3月に東京大学法学部に助手論文として提出し法学協会雑誌に2005年から2007年まで10回連載で公表した「『契約の本性』の法理論(1)~(10・完)」法学協会雑誌122巻2号~124巻5号(2005~2007年)に加筆・修正を施した上、単行本『「契約の本性」の法理論』(有斐閣・2010年)として刊行したことである。本書は、個別の契約を一定の類型に包摂して把握した上で、その類型的特質に照らして契約内容の補充や規制を一体的に行うべきことを、契約における本質的要素・本性的要素・偶有的要素の三分法の理論に関する法史学的・比較法的観点からの検討を通じて理論的に基礎付けることを試みたものであり、「現代契約法におけるプレ・モダンの法の再生とその法史学的再定位」という本研究の基本的方向性を支える基盤となるべきものである。 また、以上の三分法の理論と関連するフランスの判例におけるいわゆる本質的債務論に関し、破毀混合部2005年4月22日判決以降、責任制限条項と本質的債務との矛盾によって契約条項規制を基礎付けるという整合性の原理へと同理論が傾斜していることが、本年度における検討作業によって明らかとなった。整合性の原理は、上記の単行本においても、現実類型を含めた柔軟な類型構成の下での現代における契約の類型強制を支える原理として措定したものであり、類型強制というプレ・モダンの法制度の特徴が現代法において再生しているという法現象を理論的に把握するための重要な鍵となるべき原理であると考えられる。
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