2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730075
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊東 俊明 Okayama University, 大学院・法務研究科, 准教授 (60322880)
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Keywords | 主張責任 / 証明責任 / 事案解明義務 / 当事者宣誓制度 |
Research Abstract |
本研究は、民事訴訟の当事者(原告・被告)が、訴訟手続の各段階(訴訟準備→訴状の作成・提出→答弁書・準備書面の作成・提出→事実主張・証拠提出[主張過程]→証拠調べ[証明過程]→判決)において、どのような役割(責任・義務)を果たすのかという問題について、とりわけ、主張過程までのプロセスに照準を合わせて、検討を行うものである。具体的には、本研究は、民事訴訟における当事者間の訴訟法律関係の正当化根拠をめぐる問題(なぜ原告が第一次的に主張・立証活動をしなければならないのか、なぜ被告が応訴しなければならないのか等という問題)、および、訴訟法律関係の要件・内容・効果をめぐる問題(当事者は相手方の訴訟行為に対して、どのような応答をしなければならないか等という問題)を検討することによって、民事訴訟手続の主張過程において適用されるべき当事者の行為規律(具体的にいうと、主張・否認の具体化をめぐる規律)の内容を明らかにすることを課題とするものである。本年度は、ドイツ法に特有の訴訟制度および議論についての法制史的な考察を中心に検討を行った。具体的には、ローマ法からドイツ普通法に至るまでのLitis contestatioをめぐる議論の展開についての検討、当事者宣誓制度(裁判官宣誓制度と宣誓要求制度)についての意義と機能に関する検討、証明責任論と当事者の行為義務論(応訴義務、陳述義務、証拠提出義務、事案解明義務などに関する議論)との関係についての考察を中心に研究を行った。本年度でその全てについての研究はなし得ていないので、来年度続して研究を行う予定であるが、本年度の研究から得られた成果は、以下のとおりである。すなわち、当事者宣誓制度を備えていたドイツ法は、主張過程における当事者の行為義務、とりわけ、情報提供義務について、その者が保有する情報を訴訟において利用しないでいるという消極的な態度決定について、否定的な考え方に基づいているものである。当事者宣誓制度やLitisi contestatioという制度の基礎には、このような考え方があるといえる。明治期において、ドイツ法の制度および議論を受け継いだ当時の日本の研究者・実務家(特に裁判官)・立法担当者が、ドイツ法の制度の背後にある先述のような考え方に留意することなく、ドイツ法の議論(本研究との関係では、訴訟物論および証明責任論)を日本法に導入したことによって、主張過程における当事者の行為規律に関する議論が歪んだものになったということができる。具体的には、証明責任を負わない当事者の行為規律(相手方の主張に対して単純否認をすることを原則として許容する規律)に関してである。 本年度は、以上のような成果をまとめ、日本民事訴訟法学会にて研究報告をしたうえで、その内容を論文として公表した
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