2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730076
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
香川 崇 University of Toyama, 経済学部, 准教授 (80345553)
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Keywords | 民事法学 |
Research Abstract |
ドイツ民法やヨーロッパ契約法原則では、訴え提起を「停止事由」とし、判決を「中断事由」としている(以下では、この傾向を「中断事由の停止事由化」という)。フランス新時効法は、訴え提起を「中断事由」とする旧来のシステムを保持している。2009年度は、この中断事由の特殊性の源泉を探るために、フランス新時効法に至るまでの中断事由の解釈について検討を行った。 1804年に制定された民法典の定める中断事由は、学説・判例上、制限列挙であるとされていた。しかし、旧2244条の定める「裁判上の呼出し」は拡大解釈され、仲裁の申立てや、弁論の準備のために提出される申立趣意書の提出も「裁判上の呼出し」にあたるとされていた。この傾向にしたがって、1985年の改正によって、旧2244条の定める中断事由にレフェレにおける呼出しが加えられた。なお、判例上、債権者の請求が公的手続を経るものであったとしても、勧解や催告は、「裁判上の呼出し」にあたらないとされている。 2008年のフランス時効法改正では、準備草案において中断事由の停止事由化が提唱された。しかし、「法律家の習慣を変えない」ために、レフェレにおける呼出しを含めた裁判上の呼出しが中断事由として維持され、中断事由の停止事由化が最終的に阻止された。 わが国の債権法改正に向けて作成された「債権法改正の基本方針」では、中断事由の停止事由化が図られている。しかし、フランス新時効法は、中断事由の停止事由化が唯一の方向性ではなく、旧来の時効中断制度を維持する余地があることを明らかにしている。
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