2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730076
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
香川 崇 富山大学, 経済学部・経営法学科, 准教授 (80345553)
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Keywords | 時効 / 中断 / 停止 / 時効期間 |
Research Abstract |
今年度は、(a)時効期間の短縮化、(b)時効の中断・停止に関する合意、(c)特別法に定める時効法の検討を行った。これらのうち、(c)は来年度も研究を継続することとなっているので、今年度の研究成果として(a)(b)について報告を行う。 (a)時効期間の短縮化 時効期間の短縮化が主張され始めたのは、20世紀初頭であった。時効の存在理由を社会秩序の維持と解する研究者は、社会秩序維持のためには早期に権利関係を確定する必要があると考え、民法典の定める30年の時効期間を短縮するよう主張した。しかし、この主張は、多数説を形成するに至らなかった。ただ、2008年フランス時効法改正の立法担当者も、時効期間の短縮の根拠の一つとして社会秩序の維持をあげている。 (b)時効の中断・停止に関する合意 フランスの判例・学説では、19世紀以来、当事者間で一定期間時効が停止する旨の合意をすることが認められていた。これに対して、当事者間で中断事由を創設する旨の合意の有効性を破毀院が認めたのは、2002年であった。その判例は、フランス旧2-244条に列挙された中断事由が公序でなく、当事者はそれに反することができるとした。本判決以前において中断事由創設合意の有効性を認める見解もあったが、多数説とはいえなかった。そのため、2002年のこの判決は学説上の痛烈な批判を受けた。すなわち、このような中断合意の創設を認めると、永久に時効が完成しない事態が発生するのではないか、と。このような状況の下、2008年に改正されたフランス時効法は2002年の判例を追認することを選択した。ただ、この合意による中断には上限期間による期間制限が設定されており、上記の学説上の批判に答える形となっている。
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