2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730076
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
香川 崇 富山大学, 経済学部・経営法学科, 准教授 (80345553)
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Keywords | 民法 |
Research Abstract |
今年度は、2008年の新時効法と特別法の関係について検討した。 新時効法は、(1)保険法(2)消費者法(3)環境法(4)公衆衛生法上の時効制度と関わるものである。(1)~(4)に関する体系書を入手し検討したところ、(2)~(3)に関する体系書は、新時効法の概略を説明するだけであり、それぞれの法律における時効制度との関連性について言及していなかった。しかし、(1)保険法に関する体系書は、新時効法との関係に言及していた。そこで、今年度は、特に、保険法上の時効制度と新時効法の関係について研究することになった。 保険法の体系書が新時効法との関係に着目する理由は、保険法が時効法に関する独自の立法を古くから定めているためであった。1930年に定められた保険法は、保険契約上の訴権の消滅時効期間を2年とし(法25条、現行保険法典L.114-1条)、この時効期間を保険約款によって短縮することができないとしていた(法26条)。また、保険法には独自の時効中断事由が定められている。すなわち、(a)鑑定人の選任又は(b)保険者からの書留郵便による中断が認められている(法27条)。1972年7月11日の法律は、(b)につき、保険契約者による書留郵便も中断事由にあたるとした(改正法27条、現行L.114-2条)。 新時効法は、時効期間に関する合意(2254条1項)、時効の中断・停止の合意による追加を認める(新2254条2項)。これに対して、保険法は、弱者保護の観点から、以上の保険契約の当事者が両合意をできない旨規定している(現行L.114-3条)。新時効法と保険法上の時効制度の調整につき、このような立法的な手当がなされていないものは、解釈によって調整が図られることになる。例えば、新時効法は一定の交渉につき時効の停止を認める(新2238条)。これに対して、学説は、交渉期間中若しくはそれに極めて隣接した時点において鑑定人の選任が行われる場合があり得るので、鑑定人の選任による保険法上の中断と新時効法上の停止との関係が問題となるという。このように、新時効法と保険法上の時効制度の関係については、今後、様々な解釈上の問題が生じることが想定される。
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