2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21730081
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
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Keywords | 民事法学 / 法律行為 / 方式 |
Research Abstract |
今年度も、昨年度に引き続き、わが国の要式契約をめぐる問題について検討を進めた。検討課題として、(1)要式契約における方式要件の目的、(2)方式違反の効果、(3)方式違反の治癒の可能性の3点に照準を定めたうえで、まず、国内外の資料や裁判例から方式目的とされる要素を抽出した。それによれば、要式行為における方式要件の機能・目的として国内外の議論においておおむね一致して挙げられるのは、警告機能、助言機能、(契約内容の)明示機能、証拠保全機能、証明機能、(公的機関による)監督機能などである。これらの機能・目的は、公的な利益・第三者の利益・契約当事者の利益のいずれかの保護の必要性と密接に結びついている。以上をふまえ、いくつかの要式契約における各方式に関して、上記の機能・目的のうち、どれが、どのような観点から重視されているかについて分析を試みた(以上は、検討課題(1)に関する成果である)。(2)ドイツ法には方式違反の法律行為を無効と定める一般的な規定があるが(BGB125条)、わが国では、いくつかの要式行為については方式違反を無効とする旨の法律の規定が用意されているものの、方式違反の効果につき規定のない場合も多い。後者の場合における方式違反の効果については、学説において議論の蓄積があり、解釈で無効とされている場合も多い。しかし、ひとくちに無効といっても、例えば当該方式(その機能・目的)が公的な利益・第三者の利益・当事者の利益のいずれの保護を念頭に置くものか等によって、相対的無効や絶対的無効などのバリエーションやその他の効果の可能性も考えられうるのであり、方式目的に立ち返って議論を深化させる必要があると思われる(以上が、検討課題(2)に関する成果である)。最後に、検討課題(3)については、今年度に検討することができなかったので、引き続き来年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の検討の端緒として扱った要式の単独行為(遺言)に関する議論の蓄積が厚かったため、その分析と検討に当初予定していたよりも時間がかかったこと、そのため、要式契約の検討にとりかかるのが当初予定よりも遅れたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度に扱うことができなかった検討課題を検討したうえで、引き続き、比較法の対象としたドイツ法の議論内容を分析し、そこで得られた示唆について、わが国の議論へのフィードバックをおこなう。
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Research Products
(3 results)