2010 Fiscal Year Annual Research Report
株主利益の多様化・株式保有構造の複雑化を巡る法的問題の検討
Project/Area Number |
21730082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 貴仁 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 准教授 (30334296)
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Keywords | 民事法学 |
Research Abstract |
平成22年度に法制審議会会社法制部会における検討が開始されたことを受けて、株主利益の多様化・株式保有構造の複雑化の観点から、法制審議会会社法制部会で取り上げられた検討事項について比較法研究を行った。具体的には、(1)親会社の株主による子会社の役員等に対する株主代表訴訟(以下「多重代表訴訟」という。)、(2)子会社の株主又は債権者による支配会社又はその役員等に対する代表訴訟(以下「支配会社等に対する株主等代表訴訟」という)、(3)親会社株主による子会社の株主総会への関与の在り方をめぐるそれぞれの問題点について、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの状況を調査を行った。(1)については、各国において多重代表訴訟が認められるか否かは通常の株主代表訴訟の構造と密接に関連していることを明らかにした。特に、我が国のように株主代表訴訟の提起又は続行について原告株主の意思決定を重視する法制が採用されている場合には、多重代表訴訟の導入には慎重な態度が必要であることを示すことができた。(2)については、支配株主による濫用行為を規制する方法として、事前規制を重視するか事後規制を重視するかで各国の対応が大きく異なること、そのような差異の原因の1つとしてコーポレートガバナンスにおいて裁判所が果たすべき期待についての考え方の差異があることを明らかにした。また、この問題は各国において非上場会社の問題として議論される場合が多く、我が国で問題とされている上場子会社の場合とは問題状況が異なることを示すことができた。(3)については、各国において縮減された株主権の復元の手段として議論されているが、結合企業におけるコーポレート・ガバナンスを改善する手段として効果的か否かといった観点からの議論が乏しいことを明らかにした。本研究の成果は、所属機関の紀要に掲載予定である。
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