2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジル消費者法における広告・表示規制の私法的効果に関する基礎研究
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21730092
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前田 美千代 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (70388065)
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Keywords | 強迫 / 経済的強迫 / レジオン / 不当威圧 / フランス / スペイン / ブラジル / 民法改正 |
Research Abstract |
当年度の研究では、契約の締結過程において、交渉力の面で問題のある契約を中心に比較法的考察を行った。これは、平成22年度および23年度を通じて行った情報量の面で問題のある契約を中心とした考察との連続性を有する研究である。平成22年度から23年度では、「錯誤」「詐欺」の周辺領域として、「不実表示」「情報提供義務」の考察を中心に行ったのに対して、当年度では、「強迫」の周辺領域として、「窮迫状態」「経済的強迫」「レジオン」「不当威圧」といった類型の成立要件ならびに効果を検討した。これらの類型について、諸外国の既存法典や法典草案では、「強迫」とは異なる別個の蝦疵類型に主る立法的解決が図られており、その要件論における着眼点として、(1)依存状況を前提とした交渉力格差の存在、(2)同依存状況からの濫用的搾取(つけ込み)→交渉力格差を利用した意思形成過程への不当な干渉、(3)その結果としての契約内容の不均衡を挙げることができる。例えば、ヨーロッパ契約法原則(PECL)、フランス民法改正に際しての債務法改正草案(カタラ案)、2002年ブラジル民法157条、スペイン民法草案1301条は、過度の利益の引き出しが要件化され、さらにケベック民法では契約内容の明らかな不均衡が存在した場合に搾取を推定するのに対し、オランダ民法44条、フランス民法改正に際しての司法省契約法改正案(司法省案)は、契約内容の不当性を要件化しない。ただオランダ民法およびPECLは相手方の主観的事情を要件化するため、このフィルターを通して過度の利益の引き出し等が考慮され得る。また、効果については、相対無効や取消しだけでなく、取消権者の請求により裁判所による契約改訂がなされるほか(PECL,スペイン民法草案)、十分な額が追完されるか、利得した当事者がその利益の減額に同意する場合は無効とならないとの規定もみられる(ブラジル民法157条)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めていく過程で、現行法に限った比較法的考察では解明仕切れない点の比重が次第に大きくなり、ラテンアメリカ諸国の法制について時代を遡った考察も必要となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当該研究課題の完成年度にあたるため、これまでどおりの現行法の比較法的考察を行いつつ、今後の比重を制定法の時代背景や法文化的観点に移し、全体像を把握・提示できるように進めていきたい。
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