2010 Fiscal Year Annual Research Report
信託法・中小企業事業承継円滑化法と民法法理-遺留分制度との関係を中心として
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21730093
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
西 希代子 上智大学, 法学部, 准教授 (40407333)
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Keywords | 信託 / 事業承継 / 相続 / 遺留分 / 遺言 / 高齢化社会 / 民事法学 / フランス法;ドイツ法 |
Research Abstract |
今年度は、まず、4月に欧州社会科学史会議において、日本の遺留分制度を中核とする法定相続制度と慣習との衝突・妥協、そこにおける相続外財産移転制度の役割の可能性に関する報告を行った。その予稿に加筆修正を施して発表したのが、'Discrepancy between law and practice : Family strategies in japan'上智法学54巻1号127~147頁(2010年8月)である。会議では、ヨーロッパ諸国においても同様の問題が生じていることを知ることができた。しかし、その問題解決のための信託法の活用、あるいは、中小企業の事業承継問題への対応の現状と課題については、意見交換を行うことができなかった。諸外国では、日本ほど民法典が用意する相続制度以外の方法を用いた財産承継制度と民法法理との関係が問題視されていないように感じた。もっとも、立法時に一定の議論はあったようであり、来年度は、立法時の議論を跡付け、手がかりを得たい。 今年度の後半は、日本において資料収集を行いつつ、問題点の整理に努めた。相続人の合意をもとに遺留分制度による制約を免れる一つの方法を示す中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律については、特に、4・5条に注目し、このような制度が、今まで例外を認めなかった遺留分制度に与える影響について考察をはじめた。信託法については検討が進められなかったため、来年度の課題とする。 また、昨年度、収集した文献資料をもとに、ドイツ及びフランスにおける信託類似の相続外財産移転制度について、その概要を把握した。ただし、それらの制度と遺留分制度との関係については十分な情報が得られなかったため、来年度、さらに資料を収集して、あらためて整理、分析したい。
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