2011 Fiscal Year Annual Research Report
信託法・中小企業事業承継円滑化法と民法法理-遺留分制度との関係を中心として
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21730093
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
西 希代子 上智大学, 法学部, 准教授 (40407333)
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Keywords | 信託 / 事業承継 / 相続 / 遺留分 / フランス:ドイツ / 遺言 / 高齢化社会 |
Research Abstract |
最終年度である今年度は、これまでの信託法及び中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律についての基礎研究をふまえて、相続の代用として用いられる信託による財産移転と民法との関係について検討した。特に、民法典上の遺留分などの財産承継に対する制約が、信託による財産移転の場合にも及ぶのかという点を中心に考察を深めた。その際、信託の類型毎の特徴を整理して、それぞれの類型における民法典上の財産移転制度との矛盾ないし抵触について分析した上で、各制度を利用した場合の現実的な異同を明らかにしながら研究を進めた。あわせて、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律を利用した場合との比較も具体的に行った。 2011年6月には、第36回信託法学会のシンポジウムに参加する機会を与えられ、これらの研究成果の一端を報告した。シンポジウムでは、時間の関係上、改正信託法の目玉とも言える受益者連続信託と相続制度との適用関係ないし緊張関係を中心に報告したが、税法との関係も含む技術的側面のみならず、そもそも民法の公序は何に支えられ、何によって限界づけられるのかなど、理論的にも論じられていないことがあまりにも多いことも指摘した。 以上のように、日本法については、かなり問題意識を明確にすることができたが、フランス信託法と遺留分制度との関係、ドイツ先位・後位相続と遺留分制度との関係から示唆を得る作業は必ずしも十分におこなうことができなかったため、今後の課題としたい。さらに、実際上または人々の意識の中での民法の位置が国によって異なることも念頭に置きつつ、より広く、民法と信託法との関係の在り方について検討を深めていく予定である。
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