2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730094
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
深川 裕佳 東洋大学, 法学部, 准教授 (10424780)
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Keywords | 決済 / 相殺 / 多数当事者間相殺 / 三者間相殺 / 債権法改正 / ネッティング / 相殺契約 |
Research Abstract |
今年度は、その計画に沿ってフランスにおける議論を検討し、三人以上の多数当事者間で行われる相殺の研究へと発展させることができた。民法は、505条以下において、債権の対立要件を規定しているが、三者に2つの債権がまたがる場面についても特別の相殺を用意している(三者間法定相殺)。そして、このような法定相殺が認められなくても、学説では、合意さえあれば、自由に相殺できるとしてきた。したがって、学説では、三者間相殺であれ、それ以上の当事者間で行われる多数当事者間相殺であれ、有効と考えられてきた。しかし、そのような合意によって実現される相殺の意味については、十分な解明が行われていない状況にあった。民法の規定は、三者に2つの債権がまたがる場合までしか用意されておらず、それ以上の複雑な場面を扱っていないからである。それにもかかわらず、三者以上の複雑な相殺を解明することは、一方で、理論的観点から、「相殺」という概念それ自体に新たな意味を与え、他方で、実務的観点から、決済手段として利用されるマルチラテラル・ネッティングの民法上の根拠を探る手がかりを与えるという意義を有する。本研究は、当初、多数当事者間相殺の前提となる三者間相殺について検討する予定であったが、フランスにおいてなされた近年の研究に接したことによって、多数当事者間相殺へとその研究を発展させる基礎を固めることができた。すなわち、深川裕佳「多数当事者間相殺の有効性について」東洋法学55巻3号において、三人以上において行われる場合も考慮すると、「相殺」という概念は、閉鎖的債権関係にある複数当事者間において、各当事者の債権・債務額を差引計算することによって、その差額のみの弁済による簡易な決済を可能にするものであると考えた。このことは、多数当事者間に錯綜する債権・債務の簡易決済手段として「相殺」が役立ちうるという可能性を開くものと考えられる。
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Research Products
(3 results)