2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730096
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三枝 健治 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80287929)
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Keywords | 赤ちゃんポスト / 子の福祉 |
Research Abstract |
本研究は、本年度、昨年度に続き文献調査により主にアメリカのbaby safe havenとドイツのbabyklappeの概要を明らかにするとともに、現地調査を実施してその運用実態も把握したうえ、いわゆる赤ちゃんポストの法制化の要否について分析を加えた。文献調査および現地調査から確認し得たのは、アメリカでもドイツでも、赤ちゃんポストの賛成論が広がっている事実(例えば、baby safe havenを導入する州がアメリカで拡大していること、ドイツのbabyklappeと同様の制度が隣国であるチェコ等にまで広がっていること等)がある一方、反対論も同様に衰えていないと窺える事実(例えば、免責対象となる捨て子の年齢を引き下げて子捨ての免責を限定するに至った州がアメリカで見られること、建物外に設置していたbabyklappeを建物内に移転して子捨ての心理的負担を高めた病院がドイツで出現していること等)があるということであった。ここから、第一に、賛成・反対のいずれかが決定的な流れとして確立しているわけではなく、法制化するか否かは政策的に等しく可能な選択肢であること、第二に、子捨て助長か、子殺し防止かという実証不可能なスローガン的効果より、子殺し防止の他の政策手段との比較、子捨て容認のメリットデメリットの比較といった実際上の考慮に基づき、一つの政策判断として、法制化の要否と制度のあり方につき態度決定すべきであること、以上二点を分析の過程で指摘したことが本研究の成果である。より詳細な分析は、学術雑誌に公表する論文において示す予定である。
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