2009 Fiscal Year Annual Research Report
建築基準法上の道路における公共的利益の実現と民法の意義
Project/Area Number |
21730097
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 靖浩 早稲田大学, 法務研究科, 教授 (10298094)
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Keywords | 建築基準法上の道路 / 民法と建築基準法 / 私法と公法 / 公共的利益 |
Research Abstract |
本年度は、建築基準法上の道路の制度趣旨を確認した上で、社会の変化等に応じて建築基準法上の道路にどのような要請が求められているかを探ることにより、制度趣旨と現実の要請との間にいかなるギャップが生じているか、そのギャップを埋めるためにいかなる行政法的対応や民法上の法解釈がとられているかを分析することに主眼を置いた。そして、建築基準法に関する体系書、および、上記要請を反映する裁判例や行政実務を調査した結果、(1)建築基準法上の道路には、都市計画・まちづくりの諸局面において、公共的利益の実現に直接的・間接的に奉仕する制度として、重要な位置づけが与えられていること、(2)ところが、公共的利益の実現を担保するための制度的仕組みは、建築基準法において十分に整備されていないこと、(3)そのため、地方公共団体の中には、建築基準法上の道路が実現しようとする公共的利益の重要性とこの課題の深刻さを認識して、建築基準法上の道路の拡幅・整備に取り組むなど、独自の事業を展開するものもあること、(4)他方で、民法は、公共的利益の実現に無関心ではないものの、その受け皿となる法制度ないし法解釈を十分に提供できていないこと、などが明らかとなった。また、日独比較の観点から、平成22年9月にドイツ・ボン大学で調査を行い、ドイツ法に関する最近の文献・裁判例を収集した。これらの分析は今後進めていく予定である。 なお、建築基準法43条(接道義務)も上記公共的利益の実現を趣旨とするところ、平成21年12月17日、同条にも関わる新たな最高裁判決が出されたため、平成21年度の予算の一部を繰り越し、同判決の検討にも着手した。同判決は、上記公共的利益が住民の権利と密接に関連することを意識しつつ、住民の救済を広げるものといえ、本研究にも重要な示唆を与えることから、同判決の周辺領域を含め、さらに検討を深めていく予定である。
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