2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730098
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上田 真二 関西大学, 法務研究科, 准教授 (00359770)
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Keywords | インサイダー取引 / 金融商品取引法 |
Research Abstract |
本年度は、インサイダー取引が(1)倫理的観点・経済的観点からどのように捉えられているのか、(2)現在までのわが国の判例や刑法学説、実務家による指摘を参考に法規制上の課題が何かを洗い出すことを中心に分析・検討を行ってきた。本研究は、インサイダー取引の定義付けを試みること、わが国においてインサイダー取引を規制しでいる(と思われる)規定相互の関係や構造を明らかにすること、の2点からなるが、前述の(1)は前者、(2)は主として後者に関連するものである。 (1)については、法的観点から把握するだけでなく、倫理的観点・経済的観点からも把握することに努めることで、インサイダー取引をより立体的に捉えることにつながり、定義付けに際して有益となりうるものと考えた。ただ、倫理的観点についてはわが国における本格的な研究は見当たらず(その点で本研究の独自性を見いだすことができると考えているが)、欧米の企業倫理(Business Ethics)の分野からの文献を分析対象とした。経済的観点についてはわが国における研究に加えて、イギリスにおける研究を参考にした。現時点までの分析では、法的・倫理的・経済的観点それぞれの観点からインサイダー取引を捉えることが可能で、とりわけ人的範囲についての相違に着目することが重要だと考えるに至っている。 (2)については、とくにインサイダー取引規制上、「重要事実」の該当性の判断が大きな課題になっているが、本研究との関連では、違反行為の立証や「重要事実」と取引の因果関係(重要事実に基づいてインサイダー取引を行ったかどうか)に焦点を当てることが有益であろうとの感触を得た。それが、インサイダー取引を規制するいくつかの規定の相違点に結び付き、規定相互の関係や構造を浮き彫りにすることになると考えている。
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Research Products
(2 results)