2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730105
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島並 良 Kobe University, 大学院・法学研究科, 教授 (20282535)
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Keywords | 特許権 / 著作権 |
Research Abstract |
本研究は、本来は物権的な「形式権」として構築されてきた知的財産権が、さまざまな点で不法行為的な「実質権」へと変容を見せている現状(知的財産法制の「実質化」傾向)を分析し、主に「法と経済学」の手法を用いつつ、知的財産法制の望ましい姿を探求するものである。平成21年度はまず、次年度以降の具体的な応用研究に向けた前提的作業として、物権的法制(property rules)と不法行為的法制(liability rules)の相違や差止制度の機能に関する基礎研究を実施した。具体的には、主に「法と経済学」ならびに民法(物権法、不法行為法、特に差止制度に関するもの)に関する国内外の基本文献を収集すると共に、文献データベース構築のためのPC(ソフト等を含む)を購入したほか、資料の収集・整理を行った。また国内外に出張し、文献資料からは困難な意見交換や各国の状況把握に努めたほか、関連する学会・研究会に出席することを通じて広く情報収集に努めた。その具体的な成果として、総論的な論文「特許制度の現状と展望:法学の観点から」を収録した書籍『岐路に立つ特許制度』を編著者として公刊し、また各論的な論文を、著作権の間接侵害および特許権の職務発明制度について公表した。これら研究成果の意義は、一見すると何ら関連がないように見える知的財産法分野における喫緊の諸課題を、「実質化」という一貫した視点から横断的・包括的に検討対象とし、それら諸課題の整合的な解決策(解釈論・立法論)を提言したことにある。
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