2010 Fiscal Year Annual Research Report
権利者等不明著作物の利用の在り方に関する総合的考察
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21730107
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今村 哲也 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (70398931)
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Keywords | 著作権 / オーファンワークス / 権利者不明著作物 / 拡張的集中管理ライセンス / Orphan Works |
Research Abstract |
本年度は,初年度に文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果と,本年度の追加的な資料収集を踏まえて,原稿をまとめる作業に努めた。追加的な資料収集として,欧州での著作権関係の会議に参加し関連情報を収集するとともに,英国では研究協力者のほか権利者団体(Design and Artists Copyright SocietyやMusic Publishers Association)の所属弁護士へのヒアリングを実施した。 初年度の英国でのヒアリングによって,英国において権利者等不明著作物への対応に関し,北欧諸国の採用する拡張的集中管理ライセンスの制度に類似した枠組みが,2010年1月に英国政府が提出したDigital Economy Billに盛り込まれていることが判明していた。本年度の調査によると,同法案は通過したものの,権利者等不明著作物に関する条項は法案成立直前にすべて削除されたことが分かった。議会記録の調査や関係者へのヒアリングによると,その原因は,主に写真家団体との利害調整ができなかったことによるという。同法案の制度モデルは集中管理団体の利用を前提としていたが,孤児著作物のシンボル的な存在でもある写真の著作物の権利処理の仲介はエージェントが主流であるため,集中管理団体の存在を前提とした北欧型の制度設計には不具合を生じるようである。 本研究の成果について,その一部を論文形式で早稲田大学グローバルCOEの紀要に掲載した。同論文では,我が国では裁定制度の利用円滑化の法改正を行ったばかりであるが,我が国でも北欧型の拡大集中許諾制度に期待を寄せる見解もみられるところ,英国におけるDigital Economy Billの規定やその土台となったBritish Copyright Councilの提案は我が国の更なる制度選択の可能性のとしてあり得るため,英国での議論が参考になることを示唆した。
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Research Products
(1 results)