2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730109
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 岳志 Hokkaido University, 大学院・公共政策学連携研究部, 准教授 (40447040)
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Keywords | 右翼 / 保守 / 朝日平吾 / テロリズム / クーデター / 頭山満 / 内田良平 / 玄洋社 |
Research Abstract |
本年度は、資料収集と関係者への聞き取りに重点をおいて研究を進めた。日本の保守思想については、福田恆存と田中美知太郎の出版物を詳細に調査し、そのおおよそを収集することができた。また、関係者への聞き取り調査を進め、有益な証言を得ることができた。日本の右翼思想については、頭山満と玄洋社の活動を中心に、資料収集と聞き取り調査を進めた。特に国立国会図書館での資料収集を重点的に行い、多くの新資料の発掘をすることができた。ただ、残念ながら計画していた中国での調査が実施できず、次年度に持ち越すこととなった。さらに、頭山満から大きな影響を受けた朝日平吾について研究を進め、『朝日平吾の鬱屈』(筑摩書房)を出版した。朝日は1921年に安田財閥のトップ・安田善次郎を暗殺し、その場で自殺した三一歳の青年である。この事件はのちの右翼テロ事件、昭和維新運動に大きな影響を与え、「テロとクーデターの時代」を誘発した。拙著では、朝日の生まれた環境から青年期の歩みに注目し、その生涯と思想を明らかにした。朝日は少年期における実の母の死によって大きな屈折を味わい、入学した大学での生活も長続きせず、頭山満配下の内田良平の紹介で中国大陸に渡った。その中国での浪人生活でも成功を収めることができず、帰国した際にも父親に冷遇されたため、鬱屈を肥大化させた。彼は労働運動に参加するももの、そこでも人間関係がうまくいかず、慈善事業を起こそうとしても資金ぶりに行き詰まり、最終的に単独テロを決行する。そして、このテロが呼び水となって、約1ヵ月後に原敬首相の暗殺事件が起こった。この朝日の足跡を辿った研究はこれまでに存在せず、日本右翼研究の新たな成果として新聞書評などに多くとりあげられた。
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Research Products
(10 results)