2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松崎 俊作 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任研究員 (70456143)
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Keywords | 政策評価 / 臨床研修制度 / 医療政策 / 規範的評価 |
Research Abstract |
(1)昨年度までに(a)岡山県内の二病院を対象にして調査を実施し,現場の医療機関レベル(コンテクストレベル)における新制度に基づく研修プログラムの評価を実施した.また,(b)専門家らへのインタビュー調査および文献調査に基づいて,新医師臨床研修制度が社会に及ぼした影響に関する因果関係と,「望ましい医療」を分析する枠組みを仮説的に構築した. (2)平成22年度は上記(b)の社会全体レベルにおける評価を実施するため,全国レベルでの専門家に加えて,岡山県・徳島県・高知県における政策担当者・市民活動家らにインタビュー調査を行い,仮説的に構築した因果関係と分析枠組みの検証を行った. (3)結論は以下である.新医師臨床研修制度は,現場レベルでは総合的診療能力の向上と研修医の待遇向上という2つの目標を一定程度達成し,また現場のステークホルダーはそれぞれの価値に基づいてそれらプログラム目標を是認していることが明らかとなった.社会レベルでは,「平等」な医療システムを指向したことについては全面的に評価しうるものであったが,医師の私的性格を尊重した結果医師の偏在という問題を招き,結果として「平等性」を損なうこととなったと分析される.新制度に包含されたマッチングシステムの導入が医師の私的性格拡大を意味すると同時に,医師の偏在を引き起こすトリガーとなっていたことから,新制度については現場レベルでの目標設定は適切であったが,社会的影響も含めた政策設計には問題があったと評価せざるを得ない.また,その解決策として打ち出された政策も根本的価値の観点や長期的影響の可能性から,いずれも十分なものとは評価し得ない. (4)現在の医師偏在問題を解決するためには,医師の公的性格を重視することで平等な医療システムを実現しようとする政策が望ましい.現在,本研究成果を発表するため研究論文の執筆を進めている.
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