2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジンメルの政治理論――紛争による社会統合とヨーロッパのアイデンティティ
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21730113
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 立命館大学, 法学部, 准教授 (50453973)
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Keywords | ゲオルク・ジンメル / マックス・ウェーバー / カール・シュミット / 官僚制 / デモクラシー / 鉄の檻 / 参加 / ヨーロッパ |
Research Abstract |
本年度は、ゲオルク・ジンメルに関する資料収集のために、主としてベルリンとストラスブールにて調査を行なった。また、この調査の結果を踏まえつつ、ジンメルに関連する2冊の単著と1冊の論文集を刊行した。 研究の内容面での成果は以下の3点にまとめることができる。 まず、同質的でない。社会統合」を探求するという課題に関連して、「参加と動員の変容」というタイトルで論文を執筆した(齋藤純一・田村哲樹編『アクセスデモクラシー論』日本経済評論社)。ここでは「社会的包摂」や「新しい公共」など、近年のトピックに言及しながら、ジンメルの「余所者」論を参照しつつ、共同体に帰属しない「参加」のあり方を検討した。 つぎに、ジンメルの「流動性」としてのモデルネを参照しつつ、ウェーバー的な「鉄の濫」としての近代官僚制を相対化しながら、「後期近代」における官僚制をめぐるディスコースのあり方を検討した(『官僚制批判の論理と心理-デモクラシーと友と敵』中公新書;『比較のエートスー-冷戦の終焉以後のマックス・ウェーバー』法政大学出版局)。こうした研究によって、「鉄の濫」的なイメージを前提としながら、それと戦うカリスマ的な政治リーダーを待望するという議論の立て方に対する批判的な視座を確立することができた。 さいごに、ヨーロッパ論に関しては、ストラスブール大学で学位をとった「友/敵」の思想家カール・シュミットの「ヨーロッパ公法」との対比で、「余所者」の哲学者ジンメルのヨーロッパ論を検討する準備作業をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関連する仕事として、「参加と動員の変容」(齋藤純一・田村哲樹編『アクセスデモクラシー論』)、『官僚制批判の論理と心理-デモクラシーと友と敵』、『比較のエートスー--冷戦の終焉以後のマックス・ウェーバー』を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EU、およびヨーロッパ論に関する欧文文献が、近年大量に刊行されている。こうしたなかで研究動向を押さえたうえで、その文脈でジンメルを位置づけるという作業は難航している。これに樹しては、「永遠の会話」を批判し、「決断」を強調したカール・シュミットのヨーロッパ論との対比のもとで、「社交」の継続を追求したジンメルのそれを検討するという方向で、研究をまとめたいと考えている。
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Research Products
(3 results)