2012 Fiscal Year Annual Research Report
ジンメルの政治理論――紛争による社会統合とヨーロッパのアイデンティティ
Project/Area Number |
21730113
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 立命館大学, 法学部, 准教授 (50453973)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | ジンメル / シュミット / 争い / 社交性 / ウェーバー / ジンガー / 政党 |
Research Abstract |
この研究は、社会学者ゲオルク・ジンメルを、コンフリクトと社会統合の政治理論家として解釈し、その理論的な意義について考察しようとするものであり、本年度がその最終年である。本年度の成果は、以下の3点にまとめることができる。 まず、カール・シュミット『政治的ロマン主義』みすず書房の新版に付した解説「決められない政治をめぐる考察」である。シュミットが決定できない主体として批判する政治的ロマン主義の原型は、ベルリン、ストラスブールで時間を共有していたジンメルであり、とりわけそのエッセー「社交性Geselligleit」(『社会学の根本概念』(一九一七年)の第三章は、一九一〇年の第一回社会学会での講演)にあるとの仮説を提示した。「友/敵」のカテゴリーの「闘争」と「余所者」の包摂を求めるジンメルの「争い」の差異は、コンフリクトの思想史的研究においてきわめて重要である。 ジンメルの弟子のクルト・ジンガーにおける「争い」の政治理論については、ヴォルフガング・シュヴェントカー(野口監訳)『マックス・ウェーバーの日本』みすず書房の第三章で扱われている。論文を執筆するには至らなかったが、この翻訳を出版することで最低限の課題はクリアできたと考える。 最後に、「政党」(古賀敬太編『政治概念の歴史的展開』(第6巻)晃洋書房)を執筆し、ジンメルの「争い」の社会理論を〈対立しながらも、どこかで一定の合意を形成する〉ことを必要とする政党政治の基礎理論として考える道筋をつけることができた。政党政治の危機がいわれるなかで、今後さらなる検討が必要な論点であるといえる。なお、ジンメルと今日のヨーロッパ論の関係については、あまりに膨大なヨーロッパ研究が出版されているなかで、十分な成果をあげることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)