2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト地方分権時代のフランス都市近隣住区における居住者ガヴァナンスの可能性
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21730119
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 晋自 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (60363909)
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Keywords | フランス / 地方分権 / 地域民主主義 / 近隣民主主義 / 定住外国人の地方参政権 / 住区評議会制 / 無作為抽出 / アミアン市 |
Research Abstract |
本研究では、その初年度と2年目の2年間、アミアン市の「住民評議会」とリール市の「住区評議会」という2つの住民合議機関の制度と実践にかんする現地調査研究をおこなってきた。その結果、両自治体がいずれも近年制度改革を行い、評議員の選出にくじ(有権者名簿からの無作為抽出)を導入していることが分かった。この「市当局による市政への住民動員政策」をめぐって興味深いのは、これら2つの都市自治体が、いずれも定住外国人(特にヨーロッパ市民権を持たない、従って地方選挙の投票権を持たない非EU系外国人)の市政参加に力を入れている点である。この点について、過去の調査研究ではその実態について十分に調査できていないことから、この問題を平成23年度における現地調査研究の主要課題に位置づけた。 こうした目的を踏まえ、3年目(最終年度)にあたる平成23年度は、(1)パリ市(国立図書館、政府刊行物資料館、大型専門書店)における資料の収集をおこなうとともに、(2)ピカルディ大学法政学部フランソワ・ランジョン教授と面会し、フランス地域民主主義研究の専門家の観点から理論的なアドヴァイスを受け、(3)アミアン市現地調査(住民評議会評議員の選出枠に定住外国人枠がある)およびリール市現地調査(住区評議会とは別に、定住外国人評議会などの評議会を設置)に取り組んだ。 その結果とくにアミアン市では、かつてルネ・ラン左翼連合市政が「市会外国人準議員」制度(これを違憲・非合法とみなす中道右派のドゥ・ロビアンが1989年のコミューン議会選挙で勝利した際に廃止)を復活させるか否かが、社会党ジル・ドゥマイ左翼連合市政成立時(2008年3月)における住区評議会改革の争点となったが、同制度に「(外国人)コミュニティ代表制」の側面を見出した新市政は、これを復活させず、新設「住民評議会」のなかに「非有権者(非EU出身定住外国人)」選出枠を置いたことが分かった。
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