2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代の地方自治体:自治体間競合と国家間競合の間で
Project/Area Number |
21730120
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
藪長 千乃 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (10364845)
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Keywords | 政治学 / 地方自治 / 地域開発 / フィンランド / 自治体改革 / 社会福祉政策 |
Research Abstract |
本研究は、2005年に開始したフィンランドの自治体構造改革に着目し、(1)進行中の改革を詳細に分析しながら、(2)決定・実施に至るまでの過程で展開された多様な利益の調整作業を体系的に整理し、一般化された理論の、分権化・広域化の過程にある他の国への適用可能性についても論考することにより、(3)意図を明らかにし、(4)最終的には、その影響を分析・評価しようとするものである。 本年度は、昨年度行ったメトロポリス政策の分析を踏まえて、地方都市及び過疎・辺地自治体の動向に着目した。中部に位置する自治体(クオピオ、ヘイノラ)のほか、特に、フィンランド中東部に位置するカイヌー地域で行われている広域自治体行政実験に焦点を絞り、現地にて聞き取り調査を行った。カイヌー地方は、衰退と高齢化が進行する最も深刻な課題を抱えており、2005年から、全国的な自治体構造改革と並行して、新たに広域自治体に直接選挙による議会を設置し地域の発展を目指すカイヌー行政実験を始めた。しかし、実際に得られた効果は、地域発展につながる産業振興よりも、むしろ社会サービス供給体制の改革によって効率的な行政サービスが可能になったことであった。それは、主に中央-地方政府間の財政移転上の制約と、行政実験の計画策定が行政主導であったことによる。地域開発は財政上の理由でほぼ旧来通りの内容を続けているが、社会サービスについては地域内での財政負担方式や専門職配置体制を大胆に改革し、結果として支出抑制とサービスの質の向上をもたらしていることがわかった。
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