2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730121
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小山 花子 信州大学, 全学教育機構, 講師 (20508270)
|
Keywords | 赦し / 修復的正義 |
Research Abstract |
本年度は、ハンナ・アーレントの政治思想における赦しと和解の議論を検討し、また南アフリカの真実和解委員会について調査した。 1.アーレントの政治思想における赦しと和解の概念 アーレントにおける赦しは、意図あるいは意志されなかった悪ないしは犯罪に対応する概念である。人間の世界が多様な意志と関係によって構成される以上、自発的な活動は、その創始者あるいは行為者の意図を離れて、他者に危害を加える可能性がある。もしこれらの意図されない、予見できない結果のすべてが、行為者の責任に帰せられるならば、人間は行為するのをやめてしまうだろう。このような「窮地(predicaments)」から人間を救済するための方法としてアーレントが提示したのが赦しという営みである。他方で、意志された(willed)悪と犯罪に対して、アーレントは処罰を正当化する議論をしている。第二次大戦中のナチス下でユダヤ人虐殺計画に加担したアイヒマンの処刑を、『イェルサレムのアイヒマン』においてアーレントは正当化している。 2.南アフリカの真実和解委員会の活動の理念 真実和解委員会(Truth and Reconciliation Commission)は、1994年のマンデラ政権成立に至る過程において、新旧の政権担当者間で真実を明らかにした加害者に対して法的免責を与えるとの合意を受けて、この真実を明らかにし正義を回復するための和解の試みとして1996年に発足した。その任務としては、(1)被害の事実に関する調査・記録と公表、(2)加害の事実に関する調査、そして加害者がすべての事実を明らかにした場合の法的免責、(3)被害者に対する補償の提案の3つが存在した。
|