2009 Fiscal Year Annual Research Report
台湾における選挙制度改革とその影響:日本の経験との比較研究
Project/Area Number |
21730131
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Research Institution | Nagasaki University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松本 充豊 Nagasaki University of Foreign Studies, 外国語学部, 准教授 (00335415)
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Keywords | 政治学 / 比較政治 / 選挙制度 / 制度改革 / 台湾 / 日本 |
Research Abstract |
本年度は、第1に、選挙制度や制度改革に関する比較政治学の研究成果を踏まえて、台湾と日本の選挙制度改革を比較分析するための理論的な枠組みの構築をめざした。第2に、それをもとに、台湾における選挙制度改革の背景、および改革が実現された要因を日本と比較しながら考察した。 台湾の国民党政権は一党優位の下で持続的な経済発展を実現する一方、それを背景とした特殊利益の分配を行うことで、中選挙区制による選挙で多くの有権者の支持を獲得してきた。しかし、経済発展による都市化が進み社会的流動性が高まると、利益誘導による票の獲得は困難となり、一党優位政党である国民党の議席喪失につながった。利益誘導政治に伴う都市の負担増加や政治腐敗の拡大も、現政権や現行制度に対する都市有権者の批判を招くことになった。一党優位の状況が揺らぎ政党システムが多党化することで、選挙制度改革に向けた政党間同盟が形成される機会が生まれたが、政治改革論議の柱として選挙制度改革の機運が一気に高まったのは政権交代後のことであった。改革の方向性は二大政党(国民党・民進党)の強い影響力の下で定まり、小選挙区比例代表並立制という新たな選挙制度が選ばれた。こうした選挙制度改革の背景と経緯は日本の事例でもほぼ共通している。 研究成果の意義として指摘できることは、第1に、台湾と日本の事例を包括的に比較できる枠組みを提示したことである。第2に、中選挙区制という選挙制度そのものの特徴と政党システムの変容から改革の説明を試みたことである。改革の背景やその実現を可能にした要因に見られた両国の共通性を指摘する一方、政権交代のタイミングの違いが改革実現の時期を左右したことを明らかにした。
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