2011 Fiscal Year Annual Research Report
ECの自律的統治構造生成の史的研究:七〇年代の政治協調、農業・社会政策の再検討
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21730142
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川嶋 周一 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (00409492)
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Keywords | 欧州統合 / 欧州統合史 / コミトロジー / EU / EC |
Research Abstract |
本研究課題は、欧州共同体が1970年代にどのように域内における統治構造を生成していくのかについて、実証的に検討することを目的とするものである。本年度は、農業および関税同盟政策を遂行していくうえで、欧州共同体において特徴的だった、加盟国と共同体の利害を調整していくコミトロジーと呼ばれる立法手続きが、どのように整備され、そしてどのように共同体の中で機能していくようになっていったのかについて、実証的な研究を進めた。その成果は、端的には遠藤・鈴木編『EUの規制力』に収録されている論考「EU規制力の史的形成」である。 本論考は、欧州共同体の歴史資料館が所蔵している行政文書を典拠とする実証研究であり、本研究論文以外には、以下述べるような視角から欧州共同体の域内統治形成について切り込んでいった研究は見当たらない(コミトロジー研究は立法手続き故の法的分析もしくは機構間バーゲニングの実態、また欧州統合における民主的統治の問題と絡めて取り上げられることが大半である)。ここでは、当初加盟国が共同体の政策を統御できるように生み出されたコミトロジーという調整手続きが、共同体政策を進めていく中で、1970年代中盤から1980年中盤にかけて、加盟国への縛りが薄い当初の「弱い」機能から、より共同体志向でかつ加盟国を拘束する「強い」機能へと変容していったことを明らかにした。 このようなコミトロジー機能の変容は、この時代において、域内統治秩序が共同体政策の立法手続きという場を通して、徐々に生成していったことを物語っている。このように、コミトロジー機能の歴史的変容を史料実証的に解明したことは、本研究計画における研究目的を十分に達成するものである。
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Research Products
(2 results)