2011 Fiscal Year Annual Research Report
大西洋同盟における強制力行使論争と反デタント派の影響力
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21730148
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
吉留 公太 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (00444125)
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Keywords | 国際関係論 / 対外政策論 / 外交史 / 国際理論 / 国際協調論 |
Research Abstract |
本研究の課題である、冷戦後における反デタント派の大西洋同盟を横断した活動とその影響力を把握するため、冷戦終潟期から1990年代初頭に焦点をあてて史料取集を行ってきた。とりわけ、本研究は対外的強制行動を行う際の国連の役割についての政策担当者の解釈の相違を目安として、反デタント派の活動と影響力を整理してきた。 この:方針に従って、2011年度の当初計画ではアメリカとイギリス両国における調査を計画していた。しかし、2010年度に実施したブッシュ大統領図書館(米国テキサス州)での調査の結果、本研究の課題解明につながる史料の公開が期待できたため、予算と時間を有効に活用することを重視して、アメリカにおける史料収集を中心に研究を進めた。 調査の結果、当時の米欧論争の主要な争点の一つであった安全保障分野での欧州自立について、アメリカ側の反応を示す史料(国家安全保障会議の政策メモなど)を入手できた。また、旧ユーゴ問題について、サッチャー元首相など強制活動に積極的な欧州の政治勢力がブッシュ政権に事実上の軍事関与を働きかけていたこと、アメリカおいても強制力行使に積極的な勢力が同時期に同じような働きかけをしていたことを示唆する史料などを入手した。これらの調査によって、大西洋横断的な強制活動に関する識論の実態解明に一歩近づくことができた。 研究成果の発表に関しては、2010年度から関わってきた国際政治史の通史的研究の一環として、1970年代における反デタント派の動向、冷戦終焉期から今日に至る西側諸国の対外強制活動を概観し、そこにおける反デタント派の役割などについての解釈をまとめた。これら一連の論考は2011年度下半期に単行本(共著)の原稿として入稿した。近日出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は、主にブッシュ(父)政権期の米欧関係に焦点をあてて、アメリカで史料収集を行った。調査の成果として、北大西洋条約機構(NATO)の将来に関する国家安全保障会議(NSC)での検討メモや、旧ユーゴ問題に関する政権内の政策論争を示唆するメモなどを確認することができた。これらの史料を読み込むことで、冷戦終焉期から1990年代にかけての米欧関係の実態をより精密に把握できると期待できる。こうした点から、本研究は当初掲げた「研究の目的」に照らして、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集した諸史料を活用して、1)ブッシュ(父)政権期における米欧論争の論点整理、2)同政権期における米国内での反デタント派の関わった政策論争の実態解明、3)ブッシュ(父)政権期とクリントン政権期における諸外交政策の連続性と断絶、4)同期間における欧州諸国における反デタント派の動向の把握、などを行い、研究成果の一層の公表に努める。
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