2009 Fiscal Year Annual Research Report
不確実性下の市場取引と帰納的ゲーム理論:経験と認識の役割
Project/Area Number |
21730151
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 竜一郎 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 講師 (80345454)
|
Keywords | 不確実性 / 市場均衡理論 / 合理的期待均衡 / 高次期待 / 資産価格 / 非対称情報 / 美人投票 |
Research Abstract |
本年度は、不確実性下の市場取引の基礎理論を構築するために、市場参加者が獲得した情報をどのように認識し、将来の市場価格に対する期待を形成するか、またその期待価格をもとにどのように意思決定を行うかを分析した。 不確実性下の市場取引の研究は、Radner(1979)等による『合理的期待均衝』を基礎として進められた。そこでは、不確実性を将来起こりうる状態の集合によって表し、将来起こりうる状態に対する主体の事前の見込みをその集合の確率として与える。合理的期待均衡は、これを私的情報によって改訂した確率を用いた期待効用を最大化することで得られる。 しかし、Keynes(1936)の一般理論でも述べられているように、不確実性下の市場取引、とりわけ株式等に代表される危険資産取引では、自らの資産評価のみならず、他の市場参加者の評価、またその個々の評価を各々がどのように評価しているか…という高次の評価(期待)を考察する必要がある。本年度は、この高次評価(期待)の基礎論を構築するために、市場参加者を私的情報が獲得できるInformed tradersと獲得できないUninformed tradersに分類し、そのtrader間の情報の差異が、彼らの高次評価にどのような違いを与え、市場価格に影響を与えるかについて分析した。 以下の結果が得られている。(1)Informed tradersの割合が高くなればなるほど、時間の経過を通じて、私的情報は場価格に反映される。(2) Informed tradersの割合が高くなるほど、時間を通じた価格変動は減少する。(3)時間を固定し、Informed tradersの割合に関する比較静学を行うと、Informed tradersの割合の上昇で、公的情報への依存度が減じた価格形成がなされ、価格変動は各期において上昇する。
|
Research Products
(4 results)