2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際公共財供給メカニズムへの参加インセンティブの設計
Project/Area Number |
21730156
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
篠原 隆介 Shinshu University, 経済学部, 准教授 (40402094)
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Keywords | 公共財 / 公共財供給メカニズム / 参加 / 国際環境協定 / 交渉 / メカニズム・ブザイン |
Research Abstract |
国際公共財供給メカニズムへの不参加問題を解決する方法について研究した。主に、国際環境問題において、しばしば観察されるイシュー・リンケージなどの国家間の交渉が、不参加問題を、どの程度緩和するかを研究した。第一に、先行研究のSaijo-Yamato(1999)を基礎として国際公共財供給メカニズムへの不参加問題を分析するためのゲームモデルを構築した。プレイヤー間の公共財に対する要求水準の違いを考慮に入れたことが、このモデルの特徴である。本研究の主要な結果は、次の通りである。(1) 参加意思決定がプレイヤー間の交渉によって行われない場合には、効率的な公共財供給水準を含む様々な公共財供給が実現することが分かった。(2) 参加決定に関してプレイヤー同士が交渉できる状況では、交渉がより効率的な資源配分へ導く可能性があることが分かった。本研究では、交渉が効率的な状態を実現するための公共財供給の費用負担ルールを提示している。(3) 交渉が効率的な資源配分を達成する可能性はあるが、一般的に交渉が全てのプレイヤーの参加を導くことはない。 結果(1)は、ゲームのナッシュ均衡を分析して得た結果である。本ゲームには複数のナッシュ均衡が存在し、さまざまな公共財が供給される。これは、標準的な公共財供給モデルでは観察できない特徴である。結果(2)は、強ナッシュ均衡とコアリション・プルーフ・ナッシュ均衡を分析して得た結果である。本研究の結果は、強ナッシュ均衡とコアリション・プルーフ・ナッシュ均衡において想定される協調行動によって効率的な資源配分が実現することを表わしている。負担の衡平性を考慮に入れれば、公共財供給メカニズムに全てのプレイヤーを参加させることが重要であるが、結果(3)から、プレイヤー同士の交渉では、それも困難であることが分かる。より多くのプレイヤーを参加させるための施策を研究することが今後の課題となるであろう。
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