2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730158
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦谷 政浩 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (10304057)
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Keywords | 経済理論 / 経済予測 / 予測の合理性 |
Research Abstract |
本研究の課題は、2004年4,月以降のエコノミストによる消費者物価上昇率予測値を用いて、日本のエコノミストの予測に特徴的な性質を明らかにすることである。日本経済は、ここ20年弱の間、緩やかなデフレ傾向に苦しんできた。これに対して日本銀行は、政財界からの強い要望にもかかわらず積極的な金融緩和政策をためらってきたが、2012年2月に漸く、事実上の「インフレ目標」を採用することになった。ここで問題となるのが、「人々の将来に対する予想には各種の偏りが存在する」という点である。日銀などの政策担当者が「人々の予想にはどの様な偏りが生じる傾向があるか」を知らずに政策決定をすると、思わぬ事態を招く恐れがある。よって、エコノミストの予測の性質を分析することには、政策上重要な意義がある。 平成23年度は本研究課題の最終年度として、「エコノミストの予測は合理的と言えるのか」、すなわちエコノミストは利用可能な経済情報を全て活用して、偏りのない予測をしているのかを検証した。その結果、エコノミスト42人の当月の消費者物価指数予測のうち86%は、「前月の実績値をそのまま当月の予測値とする」よりも予測誤差が大きくなってしまっていることを発見した。これは明らかに、エコノミストが(前月実績値という)誰にでも入手可能な経済情報を活用していないことを意味する。同様に、1か月先・2か月先の消費者物価指数予測についても、エコノミストは前月実績値に含まれる情報を有効活用できていないことが明らかになった。ちなみに、各エコノミストの予測値の平均を取ると予測精度は大きく向上したが、それでも「前月実績値」による精度改善の余地が残っていた。
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