2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730165
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡田 敏裕 Kwansei Gakuin University, 経済学部, 准教授 (50411773)
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Keywords | 中期的変動 / 所得格差 |
Research Abstract |
本研究では、日本および米国の所得格差の中期的変動メカニズムを解き明かすことを主な目的とし、そのために理論モデルの構築とモデルのカリブレーション・シュミレーション分析を行う計画である。2009年度は以下の二点で分析を行った。 第一は、band-pass フィルターを使用し、日本と米国の幾つかのマクロ変数(例えば総所得)の短期的周期と中期的周期を抽出し、経済変動の事実確認を行った。まだ必要なすべての変数の分析は終了していないが、2010年度に引き続き分析を行い、中期と短期の経済変動の性質を明確にしていく予定である。 第二に、理論モデルの分析を行った。本研究の大きな目的の一つは、貯蓄を含む所得格差の変動メカニズムを解き明かすことであるので、2009年度は、将来期待が貯蓄行動に与える影響を簡単な理論モデルをベースに研究し、資産形成および格差への影響を分析した。理論モデルをもとにした詳細なシュミレーション分析によると、所得の期待される上昇は消費の所得反応度を増大させ、結果として貯蓄率の低下をもたらすことが示された。これはモデルに内生的に存在する消費に対する自己規律的行動が消費者の将来見通しから影響を受け、それによって消費反応度が変化することが理由である。消費者の将来見通しが良くなると、不確実性に起因する消費に対する自己規律的心理が強く働き(言い換えると、当期消費に対する所得の不確実性の影響が大きくなる)、所得に対する最適消費の反応度が大きくなる。なお、自己規律的心理が強く働くとは、当期消費に対する所得の不確実性の影響が大きくなるということで、不確実性がない場合と不確実性がある場合の最適消費の差が大きくなることを意味する。
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