2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730166
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 聡 Kochi University, 教育研究部・人文社会科学系, 准教授 (80323905)
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Keywords | 厚生経済学 / 功利主義 / ケンブリッジ学派 / 欲求充足 / 必要充足 |
Research Abstract |
本研究は、アーサー・セシル・ピグーが構想した倫理・道徳哲学の内在的な研究およびその厚生経済学との関連の考察を目的としている。ピグーの倫理学は、究極的な目的に関わり、かつ厚生経済学の背後にあってそのあり方を規定しているという意味で重要であるにもかかわらず、その実質的な内容を本格的に研究したものはこれまでのところ皆無といって差し支えない。本研究は、この点を正面から扱い、ピグーにおいても確固とした倫理学的知見の基盤があることを主張しようとするものである。 そして、平成21年度においては、シジウィックおよびムアとの関係からピグー自身の規範倫理学の内容を検討し、それがどのように彼の厚生経済学へ応用されたのかというテーマに関する英語の研究論文(タイトル:Pigou's Ethics and Welfare)を作成し、国際学会International Workshop Cambridge, LSE, and the Foundations of the Welfare State : NewLiberalism to Neo-liberalism(平成22年3月14日、於一橋大学)で発表した。その場において、多くの外国人研究者から貴重なコメントを貰い、海外ジャーナル投稿に向けて大きく前進した。 本年度の研究成果として、ピグーに関する新たな以下の知見が得られた。1.ピグーの倫理学的立場は伝統的な快楽主義的功利主義ではなく、ムア同様、理想的功利主義であること。2.ピグーの厚生観念には快楽のみならず、卓越性の要素も含まれていること。3.ピグーの厚生経済学の体系では、(快楽を実現する)欲求充足原理のみならず、必要充足原理も存在しており、それによって人々の倫理的人格といった卓越的要素(非経済的厚生)の実現が意図されていたこと。
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Research Products
(4 results)