2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730166
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 聡 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (80323905)
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Keywords | 経済思想 / 厚生経済学 / 倫理学 / 功利主義 / 利己主義 / 正義 |
Research Abstract |
本研究は、アーサー・セシル・ピグーが構想した倫理・道徳哲学の内在的な研究およびその厚生経済学との関連の考察を目的としている.ピグーの倫理学は、究極的な目的に関わりなおかつ厚生経済学の背後にあって、そのあり方を規定しているという意味で重要であるにもかかわらず、その実質的な内容を本格的に追究したものはこれまでのところ皆無といって差し支えない。本研究は、この点を正面から扱い、ピグーにおいても確固とした倫理学・道徳哲学的知見の基盤があることを主張しようとするものである。また、そのことを通じて、当時の経済学の科学化の流れによって捨象されてしまったピグーの厚生・福祉思想を再構成し、彼の厚生経済字が本来持っていた思想的豊饒性を描き出すことも恵図している。その目的の下、半成22年度においては、前年度の研究成果(ピグーの道徳哲学の内在的研究とその再構成)を踏まえ、ピグー、ムアおよびシジウィックらの関係を追究した.ピグーの思想、特に道徳哲学の形成においては、シジウィックとムアらとの繋がりが非常に重要だからである。具体的には、功利主義、利己主義、正義の論点から三者の理論的立場を比較分析した.とりわけ利己主義を巡っては、シジウィックとピグーとでは全く異なる見解を持つことが明らかにされ、シジウィックとピグーとの親和性を強調する従来の素朴な見方が必ずしも滴当ではないことが示された。.以上の成果は研究論文(分担執筆「シジウィック・ムーア・ピグー一功利主義,利己主義・正義の観点から-」首無通宏編『功利王義と政策思想の展開』(第3章))として本年度公表された。
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Research Products
(2 results)