2011 Fiscal Year Annual Research Report
文明観としての経済思想の変容:J.S.ミル、シジウィック、ケインズを通じて
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21730168
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 准教授 (70454634)
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Keywords | シジウィック / ミル / ケインズ / 功利主義 / 経済と倫理 / 自由と競争 |
Research Abstract |
当該研究課題の3年目にあたる本年度の研究では、主として以下の二点を軸にしながら、研究を進めた。第一に、ジェレミー・ベンサム、J.S.ミル、そしてヘンリー・シジウィックへと連なる、古典的功利主義における経済思想の現代的意義を明らかにすることである。ここでは、シジウィックの功利主義経済思想をメインターゲットとしながら、1810年代から90年代にかけての一次文献の収集・分析を国内外で進めた。また、後述する学術論文ならびに国際ワークショップにて、研究成果を発表・公刊するなどした。 第二に、フリードリヒ・ハイエクの経済思想に関する研究である。ここでは、ジョン・メイナード・ケインズとの対比を将来的課題として念頭に置きながら、一般に単なる新自由主義者と見なされることのあるハイエクの「自由と競争」に関する見解に着目し、新たなハイエク像の輪郭の検討を進めた。また、その成果を学術講演で発表するなどした。 同平成23年度において公表された主な研究成果は、次のとおりである。(1)学術論文「Three Dimensions of Classical Utilitarian Economic Thought: Berltham, J. S. Mill, and Sidgwick」(および同学術発表)において、シジウィックのベンサム・ミル解釈を手がかりとしながら、ベンサム、ミル、シジウィックという古典的功利主義経済思想の3つの異なるタイプが存在することを明確化した。(2)学術論文「Sidgwick' s Utilitarianism and Practical Philosophy」では、シジウィックの功利主義と実践哲学の関係を包括的に明らかにした。(3)学術講演「ハイエクにおける経済的自由の意義」では『隷属への道』(1944)を中心に、ハイエクの経済思想とその本質といえる経済的自由の意味を再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J.S.ミル、シジウィック、そしてケインズへと連なる文明観・経済思想の変容を描き出すという本研究は、とりわけミルおよびシジウィックに関してはおおむね順調に進んでいると言える。ただし、ケインズに関して言えば、現在Keynes Papersの調査を鋭意進行中であるが、本課題において同時に当初注目していなかったハイエクに関するさらなる調査が必要となったことから、若干当初の予定とは異なる角度からの分析が進められつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度にあたり、ここではこれまでの研究成果を積極的に刊行していくことにしたい。また、報告者は平成24年9月より、英国ケンブリッジ大学クレアホールカレッジにてアカデミック・ビジターとして長期研究滞在する予定であり、ここで、本研究の柱でもあるシジウィックならびにケインズに関する歴史的アーカイヴスの調査をいっそう進展させる予定である。
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Research Products
(3 results)