2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730171
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大久保 正勝 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 准教授 (30334600)
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Keywords | ミクロ計量分析 / 労働所得リスク |
Research Abstract |
本年度は、まず、財団法人家計経済研究所が実施している「消費生活に関するパネル調査」から既婚女性の夫の労働所得、労動時間、労働経験年数に関わる変数を作成し、2種類のバランス・パネルを構築した。1つ目のパネルは1993年から2004年までの12年間を対象とし、1993年時点で同答者である女性が24~34歳であったグループに限定した。他方、2つ目のパネルは1997年から2004年までの8年間を対象とし、1997年時点で回答者である女性が24~27歳であったグループをさらに加えた。このにパネルデータに基づいて、すべての個人に共通する要因を取り除いた後の、実質労働所得の分散を計算し、時間とともに所得分散が増加していくことを確認した。この現象は、労働経験年数が増加するにつれて、個人間の所得格差が広がっていくことを示唆する。次に、所得分散の増加の要因を検討するために、2つの代表的な労働所得変動モデルである所得プロファイル不均一モデルと単位根モデルを推定した。所得プロファイル不均一モデルでは、所得分散の増加を主に個人の能力差に求めるが、単位根モデルでは個人が直面するリスクが持続性をもつためと考える。このように両者は全く異なる経済学的解釈をもつが、どちらがよりデータと整合的かは、多にくの研究蓄積がある米国においても議論が分かれており、日本においては両者を対比した研究自体ほとんど無いのが現状である。米国の文献では、個人が直面にするリスクの持続性を表すパラメータが1に近いかどうかが議論の中心となっているため、本年度はこの点に注目しながら、分析を行った。本年度の予備的な分析から、所得プロファイル不均一モデルを用いると、持続性を表すパラメータは有意に1より小さく推定されるが、所得プロファイルの個人差を無視すると持続性を表すパラメータは1に非常に近い値で推定されることが明らかとなった。
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