2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21730176
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮川 幸三 慶應義塾大学, 産業研究所, 准教授 (00317281)
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Keywords | 経済統計学 / 観光統計 / 地域産業連関分析 / 地域統計整備 |
Research Abstract |
2011年度は、前年度までに収集した都道府県の地域産業連関表や、各種観光統計(宿泊旅行統計調査、旅行観光消費動向調査、訪日外国人消費動向調査など)、地域別の事業所ベース統計データ(事業所・企業統計調査、工業統計調査など)に基づいて、47都道府県の地域産業連関表を接続した都道府県間産業連関表を作成した。この表は、従来の地域統計における弱点の1つであった地域間の人の移動に伴う財・サービスの交易に着目して推計を行ったものである。作成した表を用いて、実際に日本の観光消費額の地域間経済波及効果に関する分析も行っており、国内観光が特に高齢化の進む地方部において大きな付加価値を誘発すること、外国人観光客に関しては、観光客の国籍の違いによって日本国内に発生する付加価値の大きさや発生地域・部門が大きく異なっていることなどを明らかにした。これらの分析結果は、地域経済の活性化や海外からの観光客誘致に関する方策を考える際の指針となるものである。このような分析の結果をまとめて、UNWTO(世界観光機関)などが主催する国際会議(The 2nd International Conference on the Measurement and Economic Analysis of Regional Tourism)において発表したことも、今年度の研究成果の一つである。 このほかに、アメリカのセンサス局において、地域データの作成と活用に関するヒアリングを行った。その中で、特に経済センサスの個別事業所データと地図情報(経度・緯度情報)を統合し、GIS(地理情報システム)上で扱える地域データベースを整備する試みや、それらの地域データベースに基づいてハリケーン等の災害の被害状況を詳細かつ迅速に分析した事例などは、今後日本でも是非取り組むべき新たな地域統計の整備・活用事例であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度の科学研究費補助金交付申請書には、本年度の研究実施計画として、「地域間産業連関表の作成」と「米国センサス局へのヒアリング」の2点をあげていた。この計画通り、「地域間産業連関表の作成」と「米国センサス局へのヒアリング」を実施することができたため、区分を「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的なテーマや研究内容に変更はないが、3点ほど、これまでに想定していなかった新たな要素を研究に盛り込む予定である。1つは、観光庁が2012年度に実施する予定である「観光地域経済調査(仮称)」の内容を、地域統計の作成にどのように活用するかという視点である。観光関連事業所を対象としたこの統計調査は、これまでにない新たな試みであり、本研究でもこれについて取り上げる必要がある。2つ目は、地域統計における地図情報の活用である。米国センサス局のヒアリングで明らかになったように、地域統計データ整備や活用において地図情報の活用は有用であり、これを本研究でも取り上げる必要がある。3点目は、地域統計における「管理・補助的活動」(いわゆる「本社サービス」)の取り扱いに関する視点である。「管理・補助的活動」の問題は、産業分類体系や産業連関表作成の場でも議論されている重要なトピックであり、地域統計における取り扱いについても考察する必要がある。
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