2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730178
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
山口 雅生 Osaka University of Economics, 経済学部, 講師 (50511002)
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Keywords | 所得格差 / 要因分解 |
Research Abstract |
平成21年度は、文献研究を行うとともに、全国消費実態調査データを用いて、日本の世帯所得格差の拡大の要因について研究を行った。世帯所得格差拡大の要因については、現代経済学研究会において「日本の世帯所得格差」というタイトルで研究報告を行った。 まず文献研究については、主に所得格差を把握するための指標を調べた。所得の二極化が発生するときに、格差が拡大していると直感的には推論してしまうが、理論的には、所得の二極化が発生するとき、ジニ係数などの格差指標が減少することがあり得る。最近の所得分布の変化は、中流所得層が低所得化して、年収1500万円以上の世帯がわずかに増加している。すなわち所得の二極化が進行しているがジニ係数はそれほど大きくなっていないことが特徴である。このような所得の二極化を考える上で、polalization指標を用いることで、所得分布の特徴を把握することができる。日本の所得分布を分析する上で、これまでpolalization指標は、ほとんど用いられていない。次年度は、一般的な格差指標に加えて、このpolalization指標を、所得格差を考察する上で用いたいと考えている。 次に日本の世帯所得格差の研究では、1989年から2004年までの全国消費実態調査から世帯所得格差の拡大の要因を分析した。全世帯の世帯所得格差は1989年から2004年にかけて徐々に拡大していた。世帯を、世帯主の就業状態で、就業者世帯、仕事を探していない非就業者世帯、仕事を探している非就業者世帯に分類し、89年から04年までの格差拡大について要因分解を行うと、89年から94年、94年から99年、99年から04年までのどの時期においても、世帯主の就業状態の変化によって、格差拡大の圧倒的部分を説明することができた。すなわち年金生活者の増加と失業者の増加が89年から04年までの世帯所得格差拡大の要因であるということを示した。この点については先行研究ではあまり論じられていない。
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