2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730178
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
山口 雅生 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (50511002)
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Keywords | 所得格差 / 賃金格差 / 人口の高齢化 / 要因分解 / 平均対数偏差 / 学歴 / 企業規模 / 低所得化 |
Research Abstract |
論文「所得格差拡大の要因」では『全国消費実態調査』の匿名データを用いて、89年から04年にかけての2人以上世帯の等価所得分布や所得格差の変化の要因を分析した。89年から99年にかけての所得格差の拡大は、世帯主が60歳以上の引退世代の世帯割合の増加が主な要因であり、99年から04年かけては、各年齢階層内の格差拡大が主な要因であった。また94年以降、拡大傾向にある60歳未満の現役世代の所得格差は、人口の高齢化の影響はほとんどなく、現役世代の各年齢階層内のグループ内格差の拡大が主な要因であった。後者は先行研究で明らかにされておらず、90年代中盤以降の現役世代の所得格差の拡大は見せかけではないことが分かった。さらに低所得層への所得分布の偏りが94年以降始まっており、94年から99年にかけて、等価所得が320万円以下の低所得世帯の割合がわずかに増加しはじめ、99年から04年にかけては、低所得世帯の割合の増加がより顕著となった。この点についても、先行研究ではほとんど触れられていない。 論文「年齢・学歴・企業規模と賃金格差」では『賃金構造基本統計調査』の公表データを用いて、94年から09年にかけてのフルタイム労働者の賃金格差の変動要因を分析した。学歴と年齢を同時に要因分解すると、男性の94年から09年にかけての賃金格差拡大は、年齢内賃金格差および学歴内賃金格差の拡大が主要な要因であることが分かった。一方で、男性の94年から09年にかけての賃金格差変動に対して、年齢間賃金格差の縮小が大きく寄与していることも分かった。年齢間賃金格差の縮小は、年齢だけを要因分解した場合にはそれほど大きくは無いが、学歴と年齢を同時に要因分解した場合には大きなものとなる。この結果は、賃金格差を要因分解する上で、学歴や年齢など二つ以上の属性で要因分解することが重要であることを含意している。この点について先行研究では、これまで検討されておらず、今後のさらなる研究が期待される。
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