Research Abstract |
本研究の目的は,国内と海外の先進諸国のマイクロデータを用いて,統一的な定義・基準を設定し,ワーキングプアの規模とその諸特性について国際比較を行うことである。今年度は,第一に,今年度の目標であった,海外でのワークショップまたはカンファレンスでの研究成果の報告,海外の査読付きジャーナルへの投稿を行った。具体的には,中国,アメリカで学会報告を行った。加えて,査読付きジャーナルの査読を通過した。このように,国内のみならず海外の専門家から評価を得て,国内,あるいは,文献研究で十分に捉え切れていない部分について補足を行うことが出来た。第二に国内の学会での報告ならびに雑誌への投稿を行った。一つは,ワーキングプアの日加比較とその特徴についての研究成果を国内の学会で報告し,また雑誌へ投稿した。もう一つはワーキングプア推計に必要となる変数ならびにマイクロデータについて,雑誌へ投稿した。最後に,アメリカのワーキングプアの推計が終了した。推計結果は学会報告・論文誌への投稿という形で公表する。昨年度と今年度を通じた研究の結果,先進諸国のワーキングプアが,若年・高齢層に集中していること,低学歴層に集中していること,自営業・不安定就業層に集中していること,従業員規模が小さい層に集中していること,またそれらは各国で共通する特徴であることが明らかとなった。一方で,先進諸国と日本で異なる特徴として,中高齢層の女性がワーキングプアに集中していることがあげられる。以上のように,今年度は,先進諸国におけるワーキングプアの特徴の分析による政策的インプリケーションの提示(特に日本の場合は中高齢層女性への施策の必要性),海外のマイクロデータ利用とその展開に関して指摘を行った。同時に,次の点に関して指摘を受け,それを明らかにすることが今後の課題となった。それは,ワーキングプアを世帯員構成の点から見ることである。
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