Research Abstract |
本研究では,規模効果のない半内生的成長モデルを構築し,南北貿易と経済発展の関係を分析した.その際,とりわけ人口成長率と各国の経済成長率の関係に着目した.本研究では,2本の論文を作成した. 1本目の論文では,経済構造の異なる先進国(北)と途上国(南)が貿易を行う状況をモデル化した.北は規模に関して収穫逓増の生産関数を,南は規模に関して収穫逓減の生産関数をそれぞれ有している.貿易パターンは固定され,北は消費財兼投資財に,南は消費財兼中間投入財に,それぞれ完全特化している.さらに両国の人口成長率は外生的に与えられ,厳密に正であり,南に人口成長率は北のそれより高い,と仮定される.分析により,いくつかの興味深い結果が得られた.第1に,長期における両国の経済成長率は均等化する.第2に,両国の交易条件は一定率で変化し続ける.第3に,北の1人当たり実質所得成長率は南のそれより高い.第4に,北の人口成長率の増大は,北の1人当たり成長率を上昇させたり低下させたりする.その一方で,南の人口成長率の増大は,南の1人当たり成長率を低下させる.第3と第4の結果は,現実のデータに適合している.以上の成果を論文としてまとめ,国際的学術誌に投稿し,掲載することができた. 2本目の論文では,経済構造は同じであるが,初期時点における資本ストックの賦存量が異なる2国の半内生的成長モデルを構築した.貿易パターンは内生的に決定される.初期時点において,自国の資本ストックは外国の資本ストックより大きいと仮定し,分析を行った.それにより,長期的な生産パターンの決定,両国の所得格差の拡大および縮小,静学的貿易利益と動学的貿易利益の関係,といった点について興味深い結果を得た.この成果を論文としてまとめ,国際的学術誌に投稿した.現在は,レフェリーコメントに基づき改訂し,再審査中である.
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