2009 Fiscal Year Annual Research Report
借り入れ制約が起業に与える影響:動学的行動モデルに依拠した実証分析
Project/Area Number |
21730184
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安達 貴教 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (50515153)
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Keywords | 自営業 / 起業 / 借入制約 / 参入・退出 / 人的資本 |
Research Abstract |
業種や形態を問わず、広い意味での「起業」という経済行為の意義は今後高まれこそすれ、低くなることはたいものと考えられる。従来の経済学においては、しかし、労働者や経営者といつた「個人」と「企業」とが別個のものとして取り扱われることが多いため、どのように企業が生み出されるのかという点に関しては、十分な知見が蓄積されているとは言い難い。本研究は、「起業」が「人間の選択行為」である点に着目して、理論と実証の両面からの分析を展開する。より具体的に述べると、本研究の目的は、アメリカ合衆国の労働力パネルデータ(the 1979 cohort of the National Longitudinal Survev of Youth ; NLSY79)を用いて、主に白人男性を想定し、動学的撰択モデル、すなわち、個人が、学校教育を終えた後に、毎年毎年、+借り入れ制約に服する可能性を持ちながら、起業するか否か、そして純産をいくら保有するのかという選択を行う状況を描写した行動理論モデルに依拠して、自営業への参入と退出に影響を与える要因を、とりわけ借り入れ制約に注目して、実証的に検討することである。 平成21年度は、研究論文"ALife-Cycle Model of Entrereneurial Choice : Understanding Entry into and Exit from Self-Employment"における実証モデルのロバストネスを考慮した推定作業を行うと同時に、Econbmetric Societyなどの各種学会での研究の中間報告を行い、改訂作業を行っていくための多くの貴重なコメントを得ることができた。レフェリー制の国際的な学術誌への投稿に向けての作業を次年度以降も継続していく。また上記論文の改訂作業と並行して、本研究のテーマと補完的な内容の研究2点の検討に着手した。まず1点目は、自営業者が非農業労働力人口に占める割合と、非農業労働力人口におけるサーヴィス業従事者の割合との関係を、OECD諸国のパネルデータを用いて検討する作業である。もう1点は、起業選択と、広義の意味での不確実性(いわゆるナイト流不実性)との関係を探ることである。それぞれ、本年度末まで、予備的分析を終えたが、次年度においてはそれらを更に進展させることを目指す。
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