2011 Fiscal Year Annual Research Report
借り入れ制約が起業に与える影響:動学的行動モデルに依拠した実証分析
Project/Area Number |
21730184
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安達 貴教 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (50515153)
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Keywords | 起業 / 借入制約 / 応用ミクロ経済分析 |
Research Abstract |
本研究は、産業組織論や労働経済学といった既存の応用ミクロ経済分析において、取り扱いが十分とは言えず、しかし、現実においては重要な経済行為と位置付けられる「起業」をキーワードに、理論と実証の双方向からの接近を「研究の目的」とするものである。平成23年度においては、昨年度から着手した理論的な研究、即ち、企業にと2て、製品市場における重要な競争戦略の一形態である価格差別戦略に着目し、その経済厚生に与える影響について分析を行う研究論文「The Welfare Effects of the Third-Degree Price Discrimination in a Differentiated Oligopoly」(松島法明氏(大阪大学社会研究所教授)との共著)を完成させ、以下の「13.研究発表」で言及している幾つかの学会や、大学での研究セミナーでの報告からフィードバックを得て、査読制の英文学術雑誌への投稿を行うことが出来た。現在、審査中である。また、本年度においては、「13.研究発表」で言及しているように、価格戦略に関する三編の論文も、既に査読制の学術雑誌への掲載が決定した(Adachi and Ebina(2012)、Okada and Adachi(2012)、安達・海老名(2012))。これらの研究は、申請時には必ずしも予定していなかったものであるが、起業論の研究で知られる、ウィリアム・ポーモル氏(ニューヨーク大学経済学部教授)が近著The Microtheory of Innovative Entrepreneurship(2010年、Princeton University Press)で強調しているように、市場経済における起業家の役割を理解する上では、「不完全競争の程度が高まることによって、企業が多様な価格付けを行うことが可能になる」という従来の経済学から導かれる見方ではなく、「不完全競争の程度が低まることによって、企業は多様な価格付けを行うことを市場圧力によって強いられるようになる」と視点がより効果的と考えられる。従って、価格戦略の研究は、起業行為の市場経済の中での役割を考えていく上で、有益かつ補完的な視点を提供するものと期待され、本年度に「研究実施計画」が目指したように、研究成果の査読制付き英文学術雑誌における公刊という形で、一定の成果を上げることが出来たと考える。
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