2009 Fiscal Year Annual Research Report
地域経済間相互依存関係の深化が人々の人的資本形成に関る意思決定に及ぼす影響の分析
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21730191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 泰裕 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (30332703)
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Keywords | 都市経済学 / 地域経済学 / 空間経済学 / 技能・人的資本 / 失業・職業選択 / 国際情報交換 / ベルギー : カナダ : アメリカ |
Research Abstract |
近年、国内外を問わず、物、人、企業の地域間移動は活発になり、地域経済間の結びつきが強くなっている。こうした結びつきの強化が、各国、各地域、そして各都市の労働市場、特にそこに住む人のスキル形成や職業選択などの人的資本形成にどのようなインパクトを与えるかを明らかにし、その意味を考察することが本研究の目的である。 今年度は、以下の二つの事柄についての分析結果を得た。まず、失業などの労働市場の不完全性が付加価値税(VAT : Value Added Tax)の実施方式の優劣にどのような影響を与えるかを分析した。VATは世界中で採用されている税であるが、財が購入された場所を基準に課税する方式と、財が生産された場所を基準に課税する方式とがある。どちらの方式を採用するのかは、課税対象となる財が国境を越えて自由に取引される場合に重要になる。こうしたVATの方式の違いは、輸出入を通じて国々の生産活動に影響を及ぼすが、それがさらに国々の雇用にどのような影響を及ぼしうるのかを詳細に分析した。分析を通じて、失業が深刻である場合とない場合とで望ましい方式が異なることが明らかになった。 次に、人々が様々な技能を持つ場合に、外国からの移民が受け入れ国の労働市場にどのような影響を及ぼすのかを分析した。技能に差異がなければ、移民は資本など労働力と補完的な生産要素の所有者の利益になるが、労働者には賃金の引き下げ圧力となり、不利に働く。しかし、技能に差異がある場合、技能同士が十分補完的であれば、労働者にとっても利益をもたらす可能性があることが分かった。更に、移民が労働者の技能(人的資本)形成に及ぼす効果も分析した。 これらの結果は、近年失業率の上昇と外国からの移民の増加を経験している日本にとって重要であると考えられる。
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Research Products
(8 results)