2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730194
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (80510255)
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Keywords | 企業の異質性 / 国際貿易 / 空間経済 / 環境政策 |
Research Abstract |
今年度も引き続き、企業の生産性の異質性を中心にした国際貿易および空間経済(経済地理)に関する研究を行い、これに環境政策など公共政策を加味して理論と実証の両面から研究を行った。理論面では今年度はとくに既存の理論を拡張し、実証研究に直結できるような理論モデルを開発した。例えば、既存研究ではサンクコストとして輸出に関する費用が扱われていたところを市場規模に比例するようなマーケティング費用あるいは広告費用をいれるモデルを作った。また、環境と貿易に応用し、汚染排出や汚染防止投資を加味したモデルに拡張した。一方で実証面では、これらのモデルを使って、日本やスウェーデンの企業の個票データを用いて、上記の環境と貿易のモデルで説明し整合的であるかどうか計量分析をした。結論として、例えば、生産性の高い企業ほど、汚染防止投資を行っており、汚染集約度は低い。輸出企業はとくに汚染集約度が低いことが理論・実証の両面で明らかになった。したがって貿易自由化は環境対策にはプラスの効果を持つことがわかった。長らく議論があった、「貿易自由化と環境対策は両立できるか」の議論に対して、ミクロデータを使った一つの解答が提示されたと思う。また、別の論文では日本のデータを用いて分析した結果、CO2排出量は空間的にも強い相関をもつことが分かり、地理的にかなり限定された地域で個々の企業のCO2排出量が相関しており、全国的な政策よりも市町村レベルといった限定された地域内・自治体レベルでの環境政策が有効であることを示唆するものである。さらに今現在、日本の企業の個票データをパネル化しており、その作業をほぼ終えた。来年度以降、このデータを用いて比較優位や広告費用を加味した理論を検証する予定である。プラントレベルでの生産性の計測は非常に難しく、現在でも様々な議論がある。今年度は準備として最新の文献を収集して、最新の手法や研究動向を調査・研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成21年度(本研究課題初年度)より当該研究課題に関する英文による論文を多数作成しており、また、国際的な学術誌にも多く刊行してきている。例えば、European Economic Review, Economic Theory Journal of International Economics, Regional Science and Urban Economics, Scandinavian Journal of Economics, Oxford Economic Papersなど国際的に一流の経済誌に刊行している(近刊含む)。また、引用件数も順調に伸びており、企業の異質性を考慮した経済地理・空間経済理論での私の論文の引用は多くなってきており、論文に限らず、最新の経済地理の書籍・教科書にも引用され始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に今年度までの研究課題や方針を継続し研究をさらに推進していく。例えば、今年度で企業データをパネル化が完成しており、これを用いて来年度はモデルの計量的に実証をする。比較優位や広告費用など加味した企業の異質性のもとでの国際貿易理論を実証する。今年度までの論文作成の生産性を維持し、学術誌への投稿・採択も今の量と質を維持するよう最大限の努力をする。
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