2009 Fiscal Year Annual Research Report
サーチ摩擦、雇用の時系列変動、及び労働市場政策の効果
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21730197
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Research Institution | Kanto Gakuen University |
Principal Investigator |
俵 典和 Kanto Gakuen University, 経済学部, 講師 (10517618)
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Keywords | 労働市場 / サーチ / 雇用・失業 / 動学一般均衡モデル / モラル・ハザード / 配置 / 起業・求人費用 / 成果報酬 |
Research Abstract |
労働者のモラル・ハザードを含む失業の動学一般均衡モデルに関する研究について、本年度の重要な進展は、雇用関係から発生する余剰の労働者の取り分が、景気とは逆に動くモデルを、理論および実証データと整合的な形で、構築することに成功したことにある。当初の計画では、幾分異なる理論的メカニズムを考察していたが、モデルの分析、関連文献の研究、データの整理をしていく過程で、自然なメカニズムを発見するに至った。具体的には、労働者が努力を行った場合には生産的な仕事に配置するという労働者・企業間の合意が、実質的には成果報酬であることに着目し、景気がよいときには、生産的な仕事が多いので、成果報酬が可能な雇用が増えている。成果報酬が可能だと、より少ない余剰でも、労働者にインセンティブを与えることが可能となる。 企業の起業・参入費用や訓練費用などの大きさは、求人数が内生的に決定される失業の動学一般均衡モデルでは、重要な役割を担っている。特に、Silva-Toledo, "Labor Turnover Costs and the Cyclical Behavior of Vacancies and Unemployment", (Macroeconomic Dynamics, 2009)では、 World BankのDoing Businessという起業コストなどのビジネス環境の大変細かいデータを利用して現実的に妥当な起業・参入コストを推定し、その値を使って、サーチモデルの数値分析を行っている。雇用創出のメカニズムの解明には、企業サイドの問題が重要であるので、非常に細かく収集された世界銀行のDoing Businessの指標が、企業環境の改善の変数の把握に役に立つか否かを、Bayesian Model Averagingの手法を用いて、世界銀行ワーキングペーパーとして刊行された論文の中で考察を行った。雇用の変動の研究には有益と考えられる。
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