2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21730200
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石橋 郁雄 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 准教授 (30365035)
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Keywords | 経済理論 / 経済政策 |
Research Abstract |
平成23年度は,昨年度までの成果をまとめた学術論文の内容を更に発展させるべく,現実に摘発された談合で使用されていたメカニズムについて考察を進めた.特に、公正取引委員会の公表している資料から推測できる談合メカニズムに関して言えば、構造的にシンプルであることを意識して考察を行った. 未だ推測の域を出るものではないものの,幾つか気づいた点がある.まず,当事者の認識の甘さの可能性である.これまでにもしばしば指摘されてきたことではあるが,当事者に談合やカルテルが犯罪行為であるという認識がない可能性があるという印象をここでも持った.犯罪という認識が薄ければ,複雑なメカニズムを使用する誘因がないのも道理であり,極めて自然な結果といえる.次に,有罪となるための要件の複雑さや困難さも影響している可能性があるという印象を持った.昨今の公正取引委員会の積極的な競争政策の運用は一般にも知れ渡っていると思われる.しかしながら,日本の独占禁止法ではカルテルや談合の存在を証明するための手順や条件が(国際的に見ても)比較的厳しいということもあり,当事者たちには公正取引委員会の積極的な運用姿勢が実質的な脅威として十分には認識されていない可能性がある. ただし、現状ではこれらの指摘を裏付けるに十分なケーススタディの蓄積がないこともあり,議論や分析をこれ以上掘り下げていくことは難しくなった.そこで,ある程度詳細な記録やデータが入手できる個別事例に絞って掘り下げていくことも検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に研究成果の一部が国際的な査読付学術雑誌に公刊されており,現在はその拡張研究に取り組む段階に到達しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Japan and the World Economyに掲載された学術論文の内容を更に発展させることを目標とする。 より具体的には、多くの現突に摘発された談合で使用されていたシンプルなメカニズムが採用された背景にある事情を明らかにすることを目標とする.特に,摘発の可能性を下げられそうな複雑なメカニズムの使用は、(まだ我々が気づいていないような)何らかの現実社会の制約によって困難になっているのではないかという点に着目して研究を進めていく.このような視点から,これまで見過ごされてきた要因が仮に明らかになれば,経済学的にも競争政策の運営上にも有意義な知見が得られると期待される. また,時間的に余裕があれば,上記作業の進行度合いや途中成果に応じて,理論的・実証的分析を加え、掘り下げていくことも予定している.
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