2009 Fiscal Year Annual Research Report
企業成長と資源配分-マイクロデータを用いた実証研究-
Project/Area Number |
21730203
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
滝澤 美帆 Toyo University, 経済学部, 講師 (50509247)
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Keywords | M&A / 企業パフォーマンス / 無形資産 / TFP |
Research Abstract |
限られた資源をどのように配分するかという問題は、そもそも経済学の最も基幹を成す研究題目である。少子高齢化が進み、労働力人口の低下した資源の乏しい日本において、どういった資源配分が最も効率的で、生産性上昇に寄与するのかといった最適資源配分の問題は早急に探究されるべき課題と考えられる。本研究は、経済主体の一つである企業に注目し、企業・産業レベルでの包括的な生産性の計測を通じて、今後の企業行動、企業内・企業間資源配分、及びそれに伴う望ましい政策の指針の提言を目指すことを目的としている。 平成21年度は、企業間の資源配分に関連する分析として、M&A、特に合併が企業パフォーマンスに与える影響について、企業活動基本調査を利用した分析を行った。製造業、非製造業に分けた分析の結果、より統合コストの高い製造業の合併においては、パフォーマンス改善に時間がかかることが示された。 また、生産性向上には、無形資産の活用が重要であるとの認識が深まっているが、無形資産に関するマクロ的な分析も行った。無形資産蓄積を標準的なRBCモデルに組み込み、産出や労働時間の動向を分析した。その結果通常のRBCモデルでは説明ができなかった90年代以降の労働時間の減少が、無形資産を含めたモデルでは相対的にうまくトレースできることが示された。 加えて、そうした全要素生産性(TFP)をより正確に計測するために、限界生産性原理の貫徹を前提した場合としない場合において、計測されるTFP成長率にどの程度の乖離があるのかを、G5諸国を対象として比較分析を行った。その結果、労働と資本それぞれの限界生産性とそれらの報酬との乖離によって生じるバイアス、及び生産関数固有の技術的TFP成長率の動向は、各国及び時期によって異なる様相を呈するが、おおむねバイアス自体は標準的な手法で計測される伝統的TFP成長率の水準と比べて、看過できない水準にあることがわかった。
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